水族館の水槽はガラスに見えるのに何故割れない?

色とりどりの魚たち、可愛いラッコやかっこいいイルカが泳いでいるのが間近で見ることができる水族館、みなさん一度は行ったことのあるスポットだと思います。
小さなエビが泳いでいるような小型の水槽から、大きなジンベイザメが泳いでいるような超巨大水槽まで形や大きさは様々です。
しかし地震など災害の多い国でもある日本で、水族館の水槽は割れたりしないのでしょうか。
今回は水族館にある水槽のガラスについて詳しく解説して行きます。
水族館のガラスの素材は?

海水がなみなみと入っている水槽のガラスには、常に何十トンという凄まじい水圧がかかっていることをご存じでしょうか。
普通のガラスではこの水圧に耐えきれずに、あっという間に割れてしまうことは簡単に想像できます。
実は水族館の水槽に使っている素材は、アクリル樹脂の一種である「ポリメタクリル酸メチル樹脂」を含んだ有機ガラスの一種であるアクリルガラスと呼ばれるものです。
水槽の大きさにもよっても異なりますが、大きな水槽はアクリルガラスを何層にも接着することで、数十センチもある厚みを作り出し水圧に負けない強度を出しています。
水槽に顔を近づけて斜めからガラスを見たり、壁際を見てみると水槽に使われているアクリルガラスの分厚さがわかっていただけると思います。
アクリルガラスの特製

アクリルガラスが誕生する以前は、水族館の水槽に関しては殆どに強化ガラスが使用されていたんです。
強化ガラスというのは仮に破損した場合でも破片がこなごなになる為に怪我の心配はないと思いますが、その加工の難しさ・強度の面から水族館の水槽に使用するには制約の多い素材でした。
そこで開発されたのがアクリルガラスです。
アクリルガラスは加工のしやすさ、性能の高さからも水族館の水槽にぴったりの素材です。
- 加工のしやすさ
- ガラスと比べると、アクリルガラスの重さは半分程度です。
また、加工温度もガラスが720度に対してアクリル樹脂が120度と低く、接着・熱処理といった加工も容易にできます。
この加工性の良さから、強化ガラスでは加工が難しかったドームのように湾曲した形など様々な形状の水槽を作ることができるようになりました。 - 高い透明度
- アクリルガラスの透明度は、ガラスの透明度を上回ります。
ガラスを分厚くしてしまうと、ガラスに含まれる不純物のせいで緑ががった色になってしまいますが、アクリルガラスはどんなに厚みを出しても透明なままです。
しかも、この透明度は長期間使用しても損なわれることがありません。 高い水圧にも耐えることができるように、何十センチにもなる分厚いアクリルガラスを水槽のガラスに採用しても、中にいる魚がクリアに見えるのはこの特性のおかげなのです。 - 高い耐久性
- アクリルガラスは紫外線に強く劣化しにくい素材です。
また、防弾ガラスの中間層としても使用されているほど強度が高いことも特徴です。
アクリルガラスも割れる?

アクリルガラスは一般的なガラスと比べて柔らかく、傷がつきやすいことがデメリットですが、耐久性の面ではガラスの約10〜15倍とされるほど割れにくいことが特徴です。
阪神大震災の際に多大な被害に遭った兵庫県の須磨海浜水族園では、アクリルガラスが使用された水槽が無事だったというのは有名な話です。
また、仮にアクリルガラスが割れた場合でも、飛び散る心配がないので安全性も高いといえます。
アクリルガラスは水槽だけでなく大型の看板や自動車のウインカー、照明器具、机の天板や時計など私たちの身近でもよく使用されているほど今では一般的な素材です。
日本一の水槽は?

日本で一番大きな水槽といえば、沖縄美ら海水族館の巨大水槽として有名な「黒潮の海」でしょう。
黒潮の海には一面が、高さ8.2m、幅22.5m、厚みは何と60㎝のアクリルガラスが使用され、その大きさはギネスブックにも認定されています。
水槽の中の海水量は約7500t、この水圧に耐えることができる巨大な窓の中に、体長8mはあろうかというジンベイザメやマンタが悠々と泳いでいる姿はまさに海の中です。
しかし、この水槽の凄いところはそれだけではないのです。
驚くべきことにこの水槽の一面には、つなぎとしての柱が一本も使われていません。
普通のガラスの場合、柱などでガラスとガラスを接合しなければ強度を保てません。
しかし日本の会社が特許を取得した接着方法を使えば、アクリルガラスを数十センチもの厚さにまで接着することが可能で、景観を邪魔する柱が必要ないのです。
まとめ
アクリルガラスがどれほど素晴らしいものかわかっていただけたでしょうか。
あまり知られていないことですが、日本企業が開発した接着方法でアクリルガラスの加工手段は飛躍的に発達していたのです。
今度水族館を訪れた際は、水槽の中で泳いでいる魚だけでなく、日本の素晴らしい技術で作られた水槽のガラスを観察してみるのも面白いかもしれませんね。


















