内視鏡に使われる光ファイバーとガラスの関係

光ファイバーは高速通信のインフラとして、現代には欠かせない存在です。
その一方で、「光を届ける媒体」としての光ファイバーも重要な役割を担っています。
光ファイバーが誕生したきっかけとなったのが、「物体を利用して光を思い通りに操る」というアイデアからでした。
今回はそんな光ファイバーとガラスの関係性についてご紹介していきます。
光ファイバーはどうやって誕生したの?

1930年ドイツの医学生ラムが、光を操る媒体としてガラス繊維を使い画像を送れることを実験で確認しました。
ラムはこの技術を応用し、胃の内視鏡を作ることで胃の中を思うがままに観察できるというアイデアを考えました。
こういった着想というのが、今日のファイバースコープを構成しているのです。
1957年、ミシガン大学ハーショヴィッツにより、ファイバースコープのモデル製作品が米国胃の鏡学会で発表される事に成りました。
更には光をより効率的にコントロールする為の仕組みという形で、今の光ファイバーの元となったクラッドとコアの2層構成による石英グラスファイバーが考えられました。
最初に発明された光ファイバーの構造では、光の入射角度によって光の通る経路が異なってしまうため、光の伝播速度に差異が発生してしまうという欠点があったのですが、このようなマイナスポイントを取り除いたのが、当時の東北大学の西澤潤一教授による研究の「自己集束型光ファイバー」だということです。
自己収束型光ファイバーというのは、中枢部分のガラス屈折率を中核の中から周囲にかけて連続的に低くなるよう変動させる方法で、レンズに似た効果を保持させる事に成功しています。
このような構造にすることで、光の入射角による経路の差異を最小限にまで抑えることができるのです。
西澤教授はこの他にも、光を発生させるための半導体レーザーや、光を受信するフォトダイオードの発明にも成功しています。
現在光ファイバーは私たちの生活に欠かせない社会インフラにまでなっていますが、これを実現させたのは西澤教授の発明のおかげといっても決して過言ではありません。
光ファイバーはどのように活用されている?

一方で、光ファイバーは、本来の用途であった「光を通す経路」としても私たちの生活の中で利用されています。
最近では身体の中を照らす為に使う病院向けのファイバースコープだけでは無く、光ファイバーの特徴を使った電燈なども注目されています。
光ファイバーを活用した照明の構造は、照らしたい場所からは離れたところに光源を設置し、光ファイバーの片端を照らします。
光は、光ファイバーを伝達しもう片端の方から周囲を照らすという事です。
光ファイバーを用いることによって、現実に照らすところと光源を距離を離しておく事が出来るんです。
高い場所や狭くて手の届きにくい場所などに照明を設置したい場合や、多くの照明が必要な場合でも、光源はメンテナンスや交換が容易な場所に集めて設置することができます。
光源を離すことで得られるもう一つのメリットは、光だけが伝わり熱が伝わらないことです。
美術館や博物館の展示品は、熱によって起こる劣化が問題視されるため、光ファイバーを使用した照明システムが積極的に採用されるようになってきています。
光源にランプではなく太陽光を利用すると、窓が設置されていない部屋でも自然光を取り込むことが可能となります。
レンズを使用した集光システムが、太陽の動きを追うことにより効率的に光を取り入れるシステムは、「ひまわりシステム」として既に商品化もされているのです。
光ファイバーを使用した照明は、夜間のイルミネーションにも利用されています。
1本のファイバーは髪の毛程度の細さのため、微細な光の点で絵を描いたり、光源とファイバーの間にカラーフィルターを挟んで回転させると、色の変化を楽しむことも可能です。
また、ファイバーを覆うカバーを取り除くことで、光ファイバー本体が明るく輝いている様子を見ることができます。
冬のシーズンに街を彩る、様々な色を発しながら光るクリスマスツリーにも、光ファイバーが大量に使われているのです。
ガラスとの関係性
光ファイバーは、ガラスを細い繊維へとすることで情報をより遠くに届けるという発想から始まったものです。
しかし、より不純物の少ない透明度の高いガラスが必要とされたため、なかなか開発スピードが上がらず専門家たちを長らく悩ませていました。
そこで開発されたのが、現在の光ファイバーで使われている「石英ガラス」という究極に不純物の量が少ない透明度の高いガラスです。
この石英ガラスのおかげで、私たちは現在スマートフォンやパソコンなどを使用してインターネットを楽しめているのです。
まとめ
光ファイバーの技術はどんどん進化しています。
光ファイバーは私たちに生活の便利さだけではなく、楽しさも広げてくれています。
光ファイバーや関連するガラスについて詳しく知り、身の回りのどんなところで光ファイバーが使用されているのかを見つけてみるのも良いでしょう。


















